株式会社角弘 さま

ボトムアップ経営へ変革
新人事制度で
「やれば報われる」組織へ

ポイント

  1. ボトムアップ経営推進に向け、
    新人事制度を策定
  2. 社員のモチベーションと
    自主性を高める評価基準
  3. 社長・幹部の意識改革に
    タナベ経営セミナー活用

お話を伺った人

角弘 
代表取締役社長 船越 秀彦氏

ボトムアップ経営へ転換し、社員一人一人の能力を生かす

創業140周年(2023年)を目前に控えた2020年、船越社長は社長に就任されました。就任時の抱負や、抱えていた課題についてお聞かせください。

船越: 当社では、「明治維新で困窮する津軽藩の武士を救う事業を興し、農機具を安く農家に提供して、地域の発展に寄与する」という創業の精神が、いまに受け継がれています。事業フィールドは青森から東北5県に拡大し、「鐵」を中心とするモノづくりを原点に、建設・土木資材、燃料、機能性新素材・プロテオグリカン(PG)など、多角的な総合商社へと発展を遂げています。

そんな当社では、前社長が長年、経営のかじ取りを担ってきました。強いリーダーシップのもと、PGなどの新事業を立ち上げて軌道に乗せる一方、経営幹部や社員が主体的に何かをするという意識は薄れていました。

そうした中で私自身、組織経営の弱さと人材の育ちにくい体質を変えていくことが、今後の成長を見据えた上で不可欠と感じていました。

こうした課題は、業績にも影響を与えていたようです。

船越: 直近の10年間、売上と社員数は減少し、さらに一人当たり生産性は低迷を続けていました。当社は総合商社であり、ビジネス上のスケールメリットは重要です。しかしそれ以上に、一人当たりの生産性が落ち込んでいたことに対し、危機感がありました。

低迷の最大の理由は、仕事の成果が適正に評価されず、社員の努力や貢献が報われないために、モチベーションや改善意欲が低下していたこと。評価の対象や基準が不透明で、社員が「やっても評価されない」「気に入られないと昇進できない」と感じてしまうと、当然、やる気は沸いてこないものです。

そうではなく、本来は能力のある社員一人一人に、高いモチベーションを持ち、思う存分パフォーマンスを発揮してほしい。そのために、適正な評価と処遇、やりがいの得られる経営体質を根づかせたい。そうした考えのもと、社長による強力なトップダウンではなく、社員の考えや意見を生かすボトムアップの経営へ舵を切ることを決めました。

また、当社は「人にやさしく暮らしに深く」という精神を掲げています。お客様や地域の方々とはもちろんですが、社員同士でもお互いにコミュニケーションを取り、そこで生まれるいろいろな意見の中からより良いものを選び、前進すればよいと考えています。

「鐵」を中心とするモノづくり

「鐵」を中心とするモノづくりを原点に、建設・土木資材、燃料、機能性新素材・プロテオグリカン(PG)など多角的な総合商社へ発展

キーワードは「自己改革」

船越社長が社長に就任され、初めて掲げた経営方針が「自己改革」です。

船越: 当社は毎年、経営方針を四字熟語に一言集約しています。

「自己改革」は、一人一人が自分の考えを持って仕事を進め、それぞれの能力を発揮していこうという思いを込めた経営方針です。

社員の自己改革や自発性を促す、また、若い社員にも希望をもって働いてもらうために、新しい人事制度の構築に着手しました。長年続いた年功序列型の人事フレーム(等級制度)、職種や階層などにかかわらず、ゼロベースで見直す改革です。

業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」組織へ

人事制度構築プロジェクト(PJ)では、人事制度の方向性や求める人材像を「人事ポリシー」として定め、見える化しました。

船越: 3つの大切な要素を人事ポリシーとしてまとめ、明確にしています。創業以来の「人にやさしく暮らしに深く」の精神を継承する「価値観」、与えられた仕事ではなく、能動的に考えて自分で仕事をつくる「行動様式」、そして、自分の内部に変化をつくる「思考特性」の3つです。

特に重視するのは「行動様式」です。一人一人がさまざまなコミュニケーションを通して協力し工夫を重ねながら、自分の意思と結果にこだわること。それが意識と行動を変える「自己改革」につながります。

求める社員像が明確だと、社員が働く上で判断基準を持てますね。新人事制度のポイントを伺いたいと思いますが、まずはこれまでの人事制度の課題についてお聞かせください。

船越: これまでは業種、職種、階層の区分なく、全社で同じフォーマットの考課表を使用していました。ですが当然ながら、職種や階層によって求められる業務や評価項目は異なります。業務の現状と評価項目がマッチしていないと、社員は何が評価されているかわからず、評価する側も差をつけられません。現状にそぐわない評価制度の状況に、PJメンバーも危機感を抱いていました。

加えて、等級に関する詳細の定義はなく、等級ごとに求められる役割や責任・能力・成果は不明確でしたし、ビジョンや方針と評価項目の連動性も乏しい状況でした。

新人事制度のポイントをお聞かせください。

船越: 新人事制度では、定量面、定性面の評価項目を業種・職種・階層ごとに詳細に定め、社員に見える化しています。

また、考課表についてはグレードを10等級、評価項目を「業績・成果」「能力(責任・業務)」「情意(態度)」の3要素に分け、それぞれの要素で詳細な評価項目を作り、業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」人事評価制度にしました。

定量的な評価項目は、個人・拠点の売り上げ達成率、利益達成率などで、サポート業務も全社の達成率に準じて評価することにしました。ただ、売上や利益への貢献ももちろん重要ですが、自主性、自己改革を重視するため、定性的な評価項目の比重を高めにしています。また、階層によって求めるパフォーマンスが異なりますから、評価項目の配点を変えています。

実務部隊をどれだけ評価し、どれだけ報いることができるか。また、何をどうすれば、どのように評価され、どんな処遇(給与)につながるのか。多様な人材とその能力を適正に処遇して、納得感のある評価制度にすることを重視しています。

等級制度(キャリアプラン)

グレードを10等級、評価項目を3要素に分け、それぞれ詳細な評価項目を作成。業務の現状に応じた評価基準で「やれば報われる」人事評価制度にした

会社を良くするための人事制度
次世代リーダーを育て、個々の成長を促す

ここからは、新人事制度を全社へ周知・浸透させていく段階です。

船越: そうですね。一旦は完成しましたが、これから1年かけて全社員を対象に説明会を開催し、現場の社員の声を拾い上げて反映させ、磨きをかけて導入したいと考えています。

人事制度は会社を良くするためのものであり、新人事制度は次世代のリーダー層育成や個々の成長も促せると思います。加えて、一人一人のポジションや成果に応じた適切な評価・賃金の処遇を受け、どんな仕事や人生を歩みたいか、経験やスキルに応じた将来のキャリアプランの設計もサポートできる。多少時間はかかっても、社員が納得できる制度に仕上げたいですね。

全社員への周知に向けて、「人事制度ガイドブック」も作成しました。全社員に配布して、「評価基準の明確化」「キャリア形成の促進」「成果なくして分配なし」を重視する新制度だと、しっかり伝えていきます。

セミナーが、自分自身を変える貴重な経験に

タナベ経営へ依頼したメリットやきっかけがあれば教えてください。

船越: 人事制度構築に関しては総務部中心に担当しており、ある程度出来上がった段階でアドバイスをする形で進めています。人事制度の課題を洗い出し、議論や検討を深める上でのパートナーとして、また評価項目案を提案いただくなど、タナベ経営の手厚いサポートを受けたおかげで、着実に進めることができました。

私自身はこれまで、タナベ経営のいろいろなセミナーに参加させていただきました。中でも、幹部候補生スクールでは異業種の人たちと議論する中、いろいろな意見があることを知りましたし、それをまとめていくプロセスなど非常に勉強になりました。その時の経験から、幹部候補生スクールに参加する社員には今も、「いろんな会社の人といっぱい話すように」と言っています。

また、社長教室では「社長は判断と決断をすればよい」という話を聞き、トップダウンをやめよう、と決めるきっかけになりました。これらのセミナーは、自分を変えてくれた貴重な経験です。

2021年度の経営方針は「拠点充実」を掲げていました。

船越: 一人一人が意識と行動を変える「自己改革」の1年目を終えたので、次なるステージとして、一人一人の集まりである拠点を変えていくという流れです。

拠点充実においても、鍵を握るのはボトムアップです。当社の場合、多くはプレイングマネージャーとしての役割と責務が求められますが、残念ながら、支店長を任せる次世代の人材育成が不十分とも感じています。

支店長の意識と行動が変われば、拠点の社員も行動を起こしやすくなり、業績も上向いていくので、新任支店長はマネジメントや部下育成、戦略立案などを学ぶタナベ経営の「幹部候補生スクール」に派遣していきます。

新本社ビルが完成
「新しいカクヒログループ」へ

カクヒログループの今後の展望についてお聞かせください。

船越: 角弘は今、グループ12社の親会社的存在です。ただこれからは、角弘は祖業とも言える資材事業に一本化し、燃料やPGなど他の事業も分社化してホールディングス化するという、新しいカクヒログループのイメージを描いています。

具体的な未来ビジョンをつくり、実現していくのは、次の世代にバトンを託してからですね。今はまず、売上や生産性を10年前の規模に回復して、「強い角弘」の姿を取り戻すことが最優先です。

本業が強いからこそ分社化もできますし、M&Aもしながらグループとして発展し、シナジーも発揮していける。その先に自ずと、「100年先の貢献」が見えてくると思っています。

2022年完成予定の新本社ビルについてお聞かせください。

船越: 青森駅前の目抜き通りに位置する社屋で、本社オフィスだけでなく、ホテルや商業施設のテナントも入居予定です。新本社ビルで、“青森市の象徴”“地域への貢献”“癒しの空間”を体現していきたいですね。地域とともに未来へ歩みを進めていくのが、当社のありたい姿です。サッカーやバスケットボールの地元プロチームのパートナー、スポーツ・教育施設のネーミングライツ・運営管理など、幅広く地域振興に貢献を続けていきたいと思います。

2022年に完成予定の新本社ビル

2022年に完成予定の新本社ビル。ホテルや商業施設も入居予定で、“青森の象徴”“地域貢献”“癒しの空間”を体現していくという

プロフィール

会社名 株式会社角弘
URL http://www.kakuhiro.co.jp/
所在地 青森市新町2-5-1(仮移転先:青森市第二問屋町3-7-10)
設立 1883年
従業員数 320名(カクヒログループ12社・1300名)

※ 掲載している内容は2021年11月当時のものです。